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「形に残す」ということ



 サウンド&レコーディング・マガジン誌 2009年11月号掲載の「半世紀後のリマスターにも耐える“最高のマスター作成術”」という特別企画に於いて「マスター作成、プロの作法」と題して記事を書かせていただいた。実に8ページ16,000字というこの企画を、おおよそ物書きが本職でない、しかも文章を書く事が大の苦手の私が引き受けるのはやはり無謀と言わざるを得なかった。

胃が痛くなる程のプレッシャーを感じながらもなんとか書き上げる事ができ、「苦手」と言いながらも無事終える事ができたのは、“使命”を感じたのと同時に、そこに“何かを残したい”という欲求が働いたからなのだろう。ただ単に“書き残す”という事に意義を感じてたのではない。書く事で自分を確認し、眠っている部分を呼び覚ます、とでも言おうか。とにかく日々時間はあっという間に過ぎていく。その時間の波に押し流されないよう、常に地に足をつけて真っすぐに立ち、周りを冷静に観察する能力が必要である。その上で、自分の中にあるものに問いかけ再定義する、またそれを“整理し形に変える”。この作業が自分にとっての「書く」という作業なのだ。自分が今までにしてきた経験、ノウハウ、テクニック などを形にして残すことはとても意味があることだと現在感じている。

そしてそれらを読んだ人達がスキルアップし、それをまた形に変えていくのだとしたら、これは自分にとってとても幸せなことだと思う。ここ数年、そんな思いで“苦手”な文字を書いているが、ついにサウンド&レコーディング・マガジン 2010年 1月号より「波形編集でトラックをつくる」という全12回の連載を始めることになった。

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 この文章嫌いの自分が「連載」なんて、数年前ならばできるとも思わなかったろうし、考えもしなかっただろう。しかしその内容は、文章を書くというより今までやってきたトラックメイキンングのノウハウをパッケージするような作業に近い。そしてこの企画では主に初心者に対して「波形編集とはどういうものか?」「どんな事ができるのか?」などを伝えていくことが主眼であるが、段階を経て自分自身が経験して培ってきたテクニックを思い出していくように、自分自身が確認していくような言わば「アルバム」のような仕上がりをイメージをしている。



この連載を通じて伝えたいこと、それは「こちらが発信するひとつのアイデアを元に自分流に発展させ、そして最終的には自分の物にして欲しい」という事。例え初心者でも楽器ができるならばその楽器を奏でる感覚でDAWに接してみて欲しい。きっと自在に操れるようになるはずである。もし楽器ができないのであれば、楽器をマスターするより短い時間で“自分の楽器”となってくれるだろう。そして、ひとつのスキルアップがトラックに大きな変化をもたらす事ができるのも「波形編集」のおもしろいところなのだ。この連載をヒントに、より高次元なトラックメイキングを目指す人が増え、少しでも多くの作品創りに貢献できたら幸いである。



 「形に残す」ということ。文章嫌いな自分がこうして「コラム」を書いているのは今もって不思議である。まだ「書く」ということに抵抗を覚えなかなか更新が進まないが、しかし昔感じた「違和感」は殆どなくなったように思う。この先、もっともっと書く機会が増えて行くことだろうが、無理せず楽しく、ただ自然に“降りてくるもの”を書けるようになりたいものだ。

 そのようになるには、
   あとどのくらい時間がかかるだろう。


By M.Tobisawa

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